木造住宅の耐震診断について



ここでは、まず木造住宅の耐震診断の簡単な概要と、実際に作業を行なう際、どのように考え、調査・診断
業務行なっているか等を、各段階ごとに紹介しています。
当事務所で手掛けた補強施工例の写真も、合わせてご覧ください。


   概要
   現場調査
   補強設計
   補強工事
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 ▪ 概要

 現在 木造の耐震診断は 財団法人 日本建築防災協会が発行している「木造住宅の耐震精密診断と補強方法(改訂版)」により検討する事が主流となっており、計算方法は、"一般診断法"と"精密診断法"に大きく分けられています。これは、その建物が持っている耐力(保有耐力)と万が一大地震(阪神・淡路大地震レベルを想定している)が発生した場合でも倒壊しない*1 ために必要となる耐力(必要耐力)を数値化し、それぞれ比較することで行います。 この比較した結果の数値を「評点」として、その建物が持っている耐震性能を評価するというものです。
この現地調査では、当然のこながら"精密診断法"を用いる方が"一般診断法"と比べると多くの情報が必用とされるため、より詳細に調べることが要求されます。
 現在、各行政庁では、耐震に関する助成金制度を設けているところが、徐々に増えつつありますが、その場合”精密診断”を用いるよう指導しているところが多い様子です。 出来るだけ詳細に調査し、その結果に基づいて「上部構造評点」を求めます。
*1 建築基準法にある極めて稀に発生する大地震

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上部構造評点
1.5以上 倒壊しない
1.0~1.5 一応倒壊しない
0.7~1.0 倒壊する可能性がある
0.7未満  倒壊する可能性が高い



対象となる建築物

 耐震診断の対象となる建物は、昭和」56年6月以前に建てられた(正確には、建築確認を受けた)建物が該当します。 しかしながら、本当の意味で建築基準法の
 ・壁の配置バランスの確定
 ・接合金物の規定が明確にされた
のは、平成12年5月からであり、新聞、テレビ等で報道されている昭和56年6月を境として、「安全」「危険」の判断をする考えには、疑問が残ります。

 つまり、昭和56年6月~平成「12年5月の間に建てられた建物にも、耐震上問題をかかえた建物もかなり存在しているのではないかという事です。


 ▪ 耐震レベル(評点)の求め方---評価方法


 この計算は、かなり複雑な為、ほとんどパソコンソフトを使って算出しています。
まず、柱の確定から始まり、
―壁の位置・仕上げ―開口の位置・大きさ―筋違いの位置・種類―床の仕様・剛性―壁の劣化度―床の荷重―
等の検討を行なってゆきます。
 その結果 算出された評点が、<概要に示した上部構造の評点>のどれに含まれかにより、耐震レベルが判るようになっています。
 

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 ▪ 現地調査

"精密診断法"を用いる場合の現地調査について

 "精密診断法"を行う上での現地調査では、既に建っている建物の

  ▪ 柱・梁の軸組、筋違いの有無・取付位置・取付方法
  ▪ 内外壁の下地を含めた仕上げ方法、劣化の状況
  ▪ 開口部の位置・大きさ

等を、細部にわたり調査する事が基本となっています。 現に居住している住まいでは、補強工事を実際に行なうかどうか決まっていない段階で、建物の内外壁をあちこち剥がしたり、壊したりする事は実際出来ないため、かなり推測の範囲での調査とならざるを得ないのが実情です。 そのため、この程度の調査で「精密診断と言えるのか?」という意見もかなり聞かれます。 しかしながら、耐震レベルを検討する上では"一般診断法"より"精密診断法"の方が
「推測の部分はあるにしろ」かなり現実的であるように思われます。
 
 ただ、この"精密診断法"を用いる場合、経験的な判断が必要とされる場面が多く、それにかなりのウエイトがかかってくるというのも事実です。 例えば、1階押入内の天井点検口より2階床下、2階押入内より小屋裏の状態を目視して調査しても、見える範囲は限られており、その見える範囲の状態より、梁の架け方、筋違いの入れ方、あるいは壁下地の作り方、そして施工した大工さんのくせ等を少しでも読み取る事が必要になってくるからです。
 いづれにしろ、建築当時の施工方法を考えながら現場調査を行い、現状の状態を把握する事が大切であると、考えています。 

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  ▪ 補強設計
 
 既存建物の耐震補強を実際に行なうには、私の場合は再度現地調査を行い、その際大工さんに同行してもらい、大工さんの意見も聞かせてもらっています。 前調査で気になっている部分の壁、天井に新規に点検口を開けるなどして再調査を行い、補強に対する考え方の整理をしています。 その上で補強設計に入る様にしています。 その場合でも、現に居住している状態での調査となるので、建物をむやみにあちこち解体するわけにはいかないのが、実情です。
 
 補強設計をする上で注意している事は、現に建っている建物の「しっかりさ加減」を認識し、当たり前の事ですが、 「全体的にバランスが良くなるようにする」 という事です。  一箇所に力が集中してしまうことのないように補強する位置を決める事が大切です。 予算の関係上、新設する耐震壁の一箇当たりの耐力を大きくとって計算している例を見かけることもありますが、それはあくまでも、計算上の数字の話しであり、既存建物に使われている材の寸法、架構状態等を考慮に入れて検討をすることが大切です。

 又、建物の重心と剛心は、出来るだけ近い方が良いとは思いますが、既存建物の改修なので、算数どおりにはいかない場合もあると思いますので、全体のバランスからの判断も重要と考えています。 但し、偏心率は0.3以下でなければなりません。


 重心とは建物平面形状の中心を言い、剛心とは水平力(地震力)に対抗する力の中心です。

 ※平成12年の建築基準法改正により、木造住宅においては『偏心率は0.3以下であること』と規定されています。

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  ▪ 補強工事
 
 補強工事に入る前に思うことは、大きな地震はなかったにしろその建物は「何十年も建ち続けている」という実績(?)を持っているということです。 そのことを考え工事に取り組むようにしています。

 実際に補強工事を始めてみると、予測と違う納まりになっている場合がありますが、それを問題視しても始まりません。 その場合は、リアルタイムに再検討、再計算を行い、あくまでも現実に即した「評点」はどのくらいなのかを常に把握し、初期の目標数値が得られるよう施工することを心掛けています。

 現実の補強工事では、部材どうしをつなぐ"補強金物"をやたらと使用する事になりますが、現状の材料の断面(部材の大きさ)をよく考慮し、既存の材料を傷めてまで基準通りの"金物"を取り付けるかどうかの判断も大切なところです。 「金物を取付ければ丈夫になる」と短絡的に考えがちなのですが、注意が必要です。
"金物"を選ぶ際は、地震が起きた時に、その柱と土台、あるいは横架材との接合部にどのくらいの力が加わるのかを検討し、そのかかる力以上の耐力を持ったものを選ぶ必要があります。 そのとき専門用語ですが、「N値」ばかりにとらわれず、周辺の材料とのバランスも考慮に入れて施工することが、大切だと考えています。

 又、多くの釘やビスを用いますが、材料が割れそうになるまで無理に打つのではなく、下穴を開ける等の処理をしてから打込むように心掛けるべきでしょう。

 補強工事に関して大いに感じるのは、「いさぎよく」工事に当たる事が何よりも求められるという事です。 
補強箇所の廻りにも羽子板ボルトの取り付け方が芳しくない部分、火打ちが釘だけで取り付けられている部分など、少し手を入れるだけで改善できる箇所が否応もなく目に入ってくるものですが、気が付いた部分には当然の如く出来るだけの処置を施すようにしています。

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